公募美術団体 一般社団法人 旺玄会

公募美術団体 旺玄会は公募展「旺玄展」への出品者を募集しております。

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    絵画展に関するQ&A
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    私の絵画制作
    常任委員 中村章子
    常任委員 斎藤寅彦
    常任委員 杉田英雄
    常任委員 田中紘子
    常任委員 加藤良子
     

    技法講座
    銀箔を焼いて、制作に生かそう
    デジタルアートへのお誘いiC
    デジタルアートへのお誘いiB
    デジタルアートへのお誘いiA
    デジタルアートへのお誘いi@
    私の絵画制作へのご招待
     「私の絵画制作」第4回は、旺玄会を代表する実力作家の一人である斎藤寅彦副会長(常任委員)をご紹介します。
     抑制された色彩、深みのある重厚な画面に込められた無限のメッセージ。 斎藤絵画がどのように制作されるのか、この項ではその秘密に迫ります。
     写実を基本としながらも、単なる自然再現とはせず、モチーフを相手にジックリと相対峙することから、自分だけの真実を、いかに表出するかが、追い求められます。
     ここでは、最もイメージに近い表現を求めての、あくなき技法探求、エスキースから仕上げに至る制作過程が、豊富な作例と共に、惜しむところなく語られております。
     制作上の英知が散りばめられています。是非ご一読下さい。
    モチーフと時間をかけてジックリと語り合い、対峙する そこから得られた、私だけの真実を描きたい 旺玄会 副会長  斎藤 寅彦(常任委員)
    1.絵を描くきっかけ
     子供の頃から絵を描くのが好きでしたが、小学校5〜6年の頃、担任の先生から誉められたことが、子供心に、自分にも存在を認めてもらえるものがあるのだと嬉しくなり、自信が湧いて来るようでした。
     旺玄展に出品するようになり、今年で42年目となります。初出品の頃は、会社務めをしながら美術研究所に通い、デッサンを学び、主に人物を主題に描いておりました。結婚してから、子供が生まれ、子供の成長と共に、生きた自分史、時の跡として、描いてきたように思います。
    第1図 蒼園
    第1図 蒼園  油彩  変形300号
    第46回旺玄展 文部大臣奨励賞  1980年
    勤めていた工場の産業廃棄物置き場を背景に、自分の子供を
    配し、ブルーグレーの寒色に統一。
    第7図〜第8図
     子供の成長と共に、勉強机が主題となります。
     当時、成田の新勝寺の近くに居を構えたこともあり、古い寺の朱色に興味が湧き、机を朱色にしてみました。
     そして、机上の空間に、使い終わったものたちを、寓意的な意味を込めて描きました。
    2.最近の制作と技法について
     基本的には、写実でありたいと思っております。趣味の海釣りに行って、自然が造り出した造形美に惹かれて、集めた貝殻、流木、使い終わった漁具、旅先で出会ったもの、庭先に植え大事にしていたのに枯れてしまった木、散歩で見つけた草花など、日常の中で関わったもの達をモチーフとして、描いていますが、キャンバスに再現することが目的ではなく、時間を孕んだもの達と時間をかけてジックリと筆を通して語り合い、対峙することから、私だけの真実を表出できれば、と制作しております。
    第9図〜第11図
     スペインを訪れた際に持ち帰ったもの達、彼の地の新聞、美術館のチケット、チラシ、拾った小石、一緒に旅をした友人の写真、アトリエの床面に散乱、時を刻む時計、タイプライター、映写機などを配し、思い出のものを一枚の作品の中に、そして自分をのぞき込むように俯瞰して描いてみました。

    第12図、第13図(鉛筆画の本)
     同時代に描いた鉛筆画。
    3.技法1 支持体作り
     以前は、市販されているキャンバスに油彩を中心に描いていましたが、乾燥に時間がかかり仕事が進みにくく、不十分な状態で塗り重ね、発色の鈍い作品になっていました。
     細かい作業に興味があったことで、テンペラと油彩の混合による古典的絵画技法の講座を受けてみました。混合技法の場合は、キャンバス作りから始めます。大作の場合は、パネルにキャンバスの裏地を張り、ウサギ膠を使用して前膠を施し、地塗り液(ボローニャ石膏と白色顔料・チタニウムホワイト)を数回塗り重ね、乾燥後に耐水ペーパーで磨き、フラットな画面となり、吸湿性のあるキャンバスを作っています。
     最近は、ミューグラウンド(メーコー社製)の下塗り液を使用しています。テンペラ、油彩、アクリル、水彩、鉛筆も描けるため、使いやすいと思います。
    第14図 時の跡−壺  M200号  油彩 パネル・キャンバス 2001年
    第14図 時の跡−壺  M200号  油彩 パネル・キャンバス 2001年
    第67回旺玄展  佐藤八十八美術館蔵(秋田県由利本荘市)
    第14図〜第16図
     趣味の海釣りに行った際に集めたプラスチックの浮き玉、タコツボなどを主役にして、庭に植えたバラなどを配し、長年勤めた会社の退職願の用紙、愛用した作業服、手帳なども描かれています。
    4.技法2 制作過程
     描きたいものが決まったら、何となく頭に浮かんでいる絵のイメージをメモ帳にイタズラ描きのようなエスキースから始めます。画面空間、主役になるもの、位置、そして構図、光と影、画面の動静など具体化していきます。イメージが固まってきたところで、少し大きい画用紙に描きます。
     この過程は、本画に移った時に迷いが生じないよう、時間をかけます。
     予め作っておいたキャンバスに、エスキースを基に下描きを行い、全面に有色下地としてローアンバーなどで、下描きが消えない程度に薄く塗ります。仕上がりが暖色であれば、寒色下地、逆の場合もあります。
     モチーフに光の当たっている生部分を、テンペラの白(チタニウムホワイト)で、立体感などを意識しながら、描き進めます。
     白での作業が終了したら、油彩(イタリアンピンク、クサカベ製)でグレーズを施し、明治・大正時代のセピア調、モノクロ写真のようになり、次の段階が楽しくなってきます。
     再び白での描き込み、グレーズを繰り返し、重厚感などを作っていき、二層、三層と進めながら、細部の描写、固有色を入れながら、自分が納得するまで描き、完成です。
     最近は、テンペラの代わりにアキーラ(チタニウムホワイト、水性、クサカベ製)を使用する時があります。
    第17図〜第19図
     主題が海で出会ったものたちになってきました。漁師の船を守る堤防、船を係留する金具、ロープ、どこから流れ着いたのか、流木などの漂流物、そこにも時が風化する痕跡があり、また波で浸食されたコンクリートの小さな穴に、貝の卵や小さな海生物が生きています。
    第20図、第21図
     流木も長い時間、海に漂い、波に洗い流されて、原形を留めず白くなったものやまだ流されて時間の経っていないものもあり、いろいろな出来事が思い起こされます。
     海釣りに行くと、必ず近くの岩にイソヒヨドリが群れをなさず、番でおり、美しい鳴き声が聞こえてくる時があります。岩に反響して、素晴らしい時間です。
    第22図
     アトリエに籠もって描いていると、気が滅入ってくるときがあります。
     気晴らしに、近くの自然の草花を水彩で描いていきます。やはり自然は美しいです。
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