公募美術団体 一般社団法人 旺玄会

公募美術団体 旺玄会は公募展「旺玄展」への出品者を募集しております。

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    絵画展に関するQ&A
    絵画展に関するQ&A
     

    私の絵画制作
    常任委員 中村章子
    常任委員 斎藤寅彦
    常任委員 杉田英雄
    常任委員 田中紘子
    常任委員 加藤良子
     

    技法講座
    銀箔を焼いて、制作に生かそう
    デジタルアートへのお誘いiC
    デジタルアートへのお誘いiB
    デジタルアートへのお誘いiA
    デジタルアートへのお誘いi@
    私の絵画制作へのご招待
     「私の絵画制作第3回」は、詩的で思索的、洗練された美しい色彩で知られる、抽象画の杉田英雄さん(監事、常任委員)です。抽象画家には、作家のコンセプトが明瞭で、すみずみまで配慮が行きとどいた作家と、即興的な偶然性に委ねて、明確な制作意図を持たず、専ら鑑賞者の感受性に依存する作家がありますが、杉田さんは前者の代表的作家です。抽象絵画は難しくて、と敬遠されている方も、この項をお読みになったら、すっかり抽象画大好き人間になってしまうかも知れませんよ。
    薬「君はクレーが好きなのかい」美術教師のこの一言で、抽象画の世界へ  旺玄会理事 常任委員 杉田 英雄
     高校では、芸術の時間に美術をとりました。新学期のはじめ、いたずら書きのような線とそれに交わる面を描いてさぼっていたら、「君はクレーが好きなのかい」という藤松博先生*(巻末注)の声にびっくり、クレーなんて見たことも聴いたこともありませんでした。
    春が来た  一時代のいたずら書き
    春が来た  一時代のいたずら書き
     それからクレーの画集を通して、モンドリアン、アルプ、カンディンスキー、モホイ・ジナ等の作品を見るにつけ、抽象画の作品に心を引かれました。幾何学的な表現、画面に於ける物理的な力の均衡、こういった抽象に心をときめかしたものです。
     当時、芸大に商業意匠科、千葉大に工業意匠科が開設され、「口紅から機関車まで」という本が出版された頃でした。この道には進めませんでしたが、美術をやりたいという気持は持ち続けていました。
     旺玄展に出品したはじめの頃は風景画でした。会員に推挙された作品は、茜の空と葉の落ちた林で、季節のおもいを作品にしました。
    晩秋  第54回旺玄展(会員推挙作品)
    晩秋  第54回旺玄展(会員推挙作品)
    石組みの庭
     その後、単純化した画面構成と日本独特の色で描きたく、その転機となったのは、京都の庭園で見た「枯山水の庭」でした。そして、キャンバスの中に自分が組み立てた庭を描こうと京都を何度も歩きました。
     下塗りの上に、盛り上げ用のメディウムで、石の質感を出し、荒いテクスチャーや水晶末などで、砂紋を表しました。
    庭に関する図書で、吉川功先生の「石組みの庭」に感銘を受けました。その内容は、
    ・石組みを庭全体と調和させる。
    ・平面、空間の美に注意すること。
    ・石組みの中のなめらかな石、とがった石を見分けなさい。
    ・静と動の美を知りなさい、
    ・主景の表現に工夫をこらしなさい。
    ・模倣を避けなさい。
    ・力を理解する。
    というものでした。これらは、庭の石組みを通して、絵画の制作の要点だと思いましたので、自分のやっていく絵画の表現の基本として受け止めました。
    石組 第59回旺玄展 努力賞
    City構築
     東京では、東京ベイ・お台場の工事、築造が進み、「ゆりかもめ」が開通しました。何度も往復し、「City−築」、「Citj−構」というCityを、線・面・色で表現しました。
     線と面のこの作品は、「安田火災美術財団奨励賞」を受賞し、損保ジャパン美術館に展示されました。
    City―築― 第68回旺玄展  安田火災美術財団奨励賞(当時)
    City―築― 第68回旺玄展  安田火災美術財団奨励賞(当時)
    翌年3月 損保ジャパン美術財団選抜奨励展出品
     それから、ヴェネチアに旅した時の作品で、ここは詩の世界と街の構築の歴史で今があるのだと思いました。線と色面での作品。
    水路の街・ヴェネツィア  第70回記念旺玄展
    水路の街・ヴェネツィア  第70回記念旺玄展
     この作品は、「画家が描いたヨーロッパ」美術年鑑社刊 に掲載されています。
    詩の奏でる世界からLocusへ
     詩の中の一つのフレーズや言葉に気持が引かれ、それを表現してみたいと描きました。
     このようなイメージは、平面の世界なので、色の組合せがポイントの一つになります。日本古来の色と単純化した線と面(〇△□)を使い、自分の気持や頭の片隅にある日本的な情緒・詩を半抽象的に表現する方向になりました。
     時にはマンセルの色相環、色立体を眺め、色相、明度、彩度など、色彩の理論を再確認しながら楽しみました。
    Locus(軌跡)
     谷川俊太郎氏;「20億光年の孤独」より、宇宙のひずみ、引き合う、もとめ合う。
     今、宇宙の観察により、137億光年という時間と光の軌跡が、次々と究明されています。多くの星々は混沌として、在る条件を満たすべき軌跡を生じ続けているのだろうか。そして、人間も、過去、現在、未来へと、どんな軌跡を描いて行くのか、思いは深いところです。
    Locus79  第79回旺玄展
    Locus79  第79回旺玄展
     画面を4分割し、赤と青の面には、星の軌跡を表す線(血管)を、グレーの面には、金色と銀色の星(心)を描きました。
     宇宙は、ひずみ、膨らんで行きます。どんな軌跡を辿って、引き合い、もとめ会うことが出来るだろうか。これは人間のLocusです。
     燃えつきて消える星、新しく生まれる星、闇の色は左3分の1はグリーン、中央は黒、右3分の1はブルーブラックの黒に近い明度のものです。
    Locus―闇からの輝き  第80回記念旺玄展
    Locus―闇からの輝き  第80回記念旺玄展
    次は、〇まると□しかくの叙情へ
     谷川俊太郎氏の「20億光年の孤独」「クレーの天使」を読むたびに、氏の、その感性と混じりの無い叙情に心を打たれます。絵として表現したい気持ちで一杯です。
     今137億光年に迫っている宇宙のLocusを透明な叙情で描くことは出来ないでしょうか。
     クレーの絵とひびきあう谷川氏の詩が奏でる二重奏の世界に私は夢を見たい……。
     「僕は思わずくしゃみをした」―花粉症です。
    *(巻末注)
    藤松 博(1922〜1996)
     東京高等師範(現筑波大学)卒業後、美術教師をしながら、昭和27年読売アンデパンダン展に前衛的な作品を出品、静かな中に、社会風刺を込めた作品は注目された。昭和34年から2年間ニューヨーク近代美術館研究員としてニューヨークに滞在、帰国後は、「ひとがた」や「旅人」シリーズと言った独自の世界を開拓し、抽象表現に学んだ具象画は、高く評価された。長野県松本市出身
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