テーマ性のある小品による企画展示は、すっかり旺玄展のお家芸となりましたが、三回目となる今年は、「さまざまな顔の表現」です。 昨年は、誰でもが親しめる「わがふるさとの山河」 でお客様に大人気でしたが、今年のテーマは、作家の思いがより 表に出ることと、人物画と云うことで、より高度な表現技術が必要と云うことで、美術評論家や他の会派の作家など、専門家筋から注目され、「見応えのある展覧会」と高く評価されました。 全作品は、「展覧会」ページの企画展「さまざまな顔の表現」に収録されておりますが、スペースの関係で、各作品に添付された作者のコメントは掲載されておりません。 そこでここでは、そうしたコメントの幾つかを紹介します。 作品は、敢えて添付しません。ご興味を感じられた際は、「展覧会ページ」の企画展「さまざまな顔の表現」アルバムでご確認下さい。 ★未知の世界の扉を開けると ボンヤリしている私の中に 眠っていた力が湧いてくる 何やら表れる 未知への道 世界をつなぐ 光りの波 時代を呼吸する 開放的空間へ 悠々とさあ〜進もう (田中紘子) ★気心の知れた友人と居酒屋で飲んでいる…というありきたりなワンシーン。 ありきたりだけど、とても有難い時間。 自身が一番自然体で笑顔の写真を元に。ノスタルジックな雰囲気になるように意識しつつ、楽しんで制作しました! 大正ロマンの新世界へタイムスリップ用♪ (松本奈緒子) ★今の顔を描こうとしている時、若い頃の作品があることに気づき、それも絵の 中に組み入れることにしました。50年以上も前の油彩なので、絵具の剥離も生じていました。 自画像を描くの久しぶりです。構図として二つの顔のバランスに留意。配色や色感では肌色を出すのに苦労しました。 今顔右側のグラデーションは、今後の人生・年輪のつもりです。 (津波信久) ★移ろいゆくもの ゆったりと流れる陽の光を受けて移りゆく影 その前にたたずむ少女の視線 過ぎゆくカレンダー そしてドライフラワー ふとシニカルに思い浮かぶのは、 「花の色はうつりにけりないたずらに 我が身世にふるながめせしまに」 (前田和子) ★ピカソが好きです。はじめの頃は、絵より大胆不敵な人生を尊敬していました。 子供の頃に描いた絵をしおり代わりに使っていました。ピカソの絵とは知り ませんでした。実物の通りに描かなくていいんだと……気づきました。 今は、絵画の力で、日本の文化が良くなることを願いながら描いています。 (市原智美子) ★満面の顔もあれば、憤怒の顔もある。 哀しい顔もあれば、ほくそ笑む顔もある。 そして、洗顔する顔もまた自分の顔 (喜多廣志) ★ハープを国産の材料で、1から作りたい!」山梨の木を使い、漆を塗り、箔を 張り、制作、調律、修理、全て一人で行う日本でも数少ないハープ職人です。 その情熱と行動力、真剣な眼差し、この方の想い、そしてハープのつややかな 色合いと音色、それら全てを何とか絵に表現できないかと、頑張って描きました。 ハープは、縁側に置くと風で自然に鳴る事もあるそうです。 マイスターは、山の水でこだわりのコーヒーを淹れてくれました。 風のハープ…聞いてみたいですね。 (大神田礼子) ★自画像「これが私…!」では、西行法師の古歌 「嘆けとて 月やは物を思わする かこち顔なる わが涙かな」 から発想を得て、今私はこんなにも驚いている。こんなにも純粋の気持ちが (恋の)、まだ私の中に残っている。ことに…! ・古い帯地や和菓子の型抜き等を用いて、コラージュをはじめとするモダンテ クニックの手法を多用して自身を表現して見ました。 (高桑昌作) ★常に大作は人物を主題にしています。師市丸節子先生の師は、伊東深水先生でした。 お二人の先生の様に、私も若い女性にこだわっています。現代女性にかか わらず、これから活躍するであろう全若い女性は常に幸せでいてほしい。 カサブランカやボタン等の花の様に美しく輝いていて欲しい、の願いをこめて描いてみました。 (服部倫子) ★モデルは演出家を目指している女性です。彼女は手を合わせる仕草をよくしています。 その事を尋ねると「合わせた手の中には将来への期待や不安、葛藤、 感謝…と色々な思いを潜めているもの」と少しはにかみながら語ってくれました。 芸術の道を歩む仲間として共感し、自身の思いも重ねて描きました。 (馬場由紀子) ★平安貴族の女性は、眉を全部抜いて、鉛白の白粉を篦(へら)で真っ白に分厚く塗り、 額の可成り上の方に、太い横棒状の眉を手書きしていました。 清少納言は、直毛で長い黒髪が美人の絶対条件だった時代に、 当時の名だたる男性貴族にモテモテだったわけですので、今見れば結構美人だったのではないでしょうか。 「をかし」は、今日の「可笑しい」ではなく、「素敵だ、興味が持たれるといった意味をもっています。 (片山聖三) ★敗戦のため5歳で満州から引き揚げ、当時の悲惨さが、私の原風景です。 シリア内戦など、不穏な空気が強まる中、「いかなる理由があろうと戦乱を起こさないよう」との願いと祈る顔です。 私はこの願いを表現したく描いてきました。 (世森純子) ★眼を怒らせて睨む如く見る。それは、人間の持つ「愚かさ」と「欲」への怒りの表情であり、 慈愛を秘めた叫びの表情でもある。「真夏の夜の青森ねぶたの貌」で描きました。 (橋憲悦) 以上はホンのサンプルですが、結構面白いとお感じになりませんか。 逆に、絵をご覧になって、この作者はどんなコメントを書いていたのか、というお尋ねがあれば、ご紹介します。 (問合せ先) fwka5694@nifty.com 片山聖三(旺玄会 事務局長)
松本奈緒子さんは、琴奨菊関の結婚に一役 プレゼントの絵本作家は松本さん