公募美術団体 旺玄会は公募展「旺玄展」への出品者を募集しております。
私の絵画制作は、第81回旺玄展の後、しばらくお休みを頂いておりましたが、第82回展を前に、装いも新たに再開します。
第5回目となる今回は、半具象で、美しい色彩と都会的センスあふれる作品で知られる旺玄会理事の中村章子常任委員です。中村絵画の魅力はどこから出てくるのか、この項にはそのヒントが隠されています。
作品の多くは、その時その時における作者の心境を表現したもので、多くの場合、画題は「景」または「ひとの景」となっており、サンプル画で表題を示していないのは、そのためです。
また中村常任委員は、東京都美術館が主催する「公募団体ベストセレクション美術2016展」に、旺玄会を代表する作家の一人として、作品を展示しております。(2016年5月4日〜27日 東京都美術館)
絵を描く深いところでは、戦後の混乱期に、幼児・少女時代をおくったことが、大きくかかわっていると思います。
荒涼とした、虚しき息苦しさから解放してくれるのが描くことでした。
美学生になり、日本、西洋の美術史の中で、残ってきた作品の数々を目の当たりにして、描くことを生きる基盤にすると、自然も人も生も死も、共に身近なところで、一つの調和として考えられました。
学生時代、石膏像であったり、人体であったり、一つの個体を観察し、丸ごと捕らえて描いていたことは、見えないところまで見ようとする力を少しでも付けたのだと思います。
20代の終わりの3年半パリに住み、ヨーロッパの美術館・博物館を見て回りました。
そこで、マーク・ロスコ(1903〜1970)、セルジュ・ポリヤコフ(1900〜1969)の絵をそこで見て、表現の大きさ、力強さに圧倒され、 深いところで共感を覚えました。
フランスから帰り、生活、子育ての中で、旺玄会に出品することは、大作を描くチャンスとなり、描き続ける想いを繋げる場ともなりました。
日本人の特徴だと思いますが、私も四季によって影響されやすいようです。
その時の気持ちで、一つの色をキャンバスに塗ってみます。その色を見て、それが良い色だと思ったら、その色を塗り進めて、次に隣にはどんな色を持って行くのが良いかという風に考えながら、例えば画面を三つに分割し、そこに色を置いてみます。
その段階で、何日かそういう作業をした後、線で形を入れて行きます。
その際、私は花とか鳥とか、形のあるものを入れますが、あまり写実的には描きません。現実に見えるものには限定しないで、画面全体を一つの空間として、過去、現在、未来、身近から遙か遠く離れたものに思いをはせながら、形を入れてみます。
このようにして、大まかな構図を決めますが、その後部分的に描き込みます。
その描き込みの変化を見て、その後の方向を模索します。つまり、あまり決まっていないという感じで、パズルを合わせるような感じで、自分の中で、一つの絵に仕上げて行く、そんな感じが強いと思います。…… (談)
志して半世紀が過ぎて、なお続けている今、人と自然のいとなみ、融合、息づかいを暖かく活き活きと表現していきたいと思っております。
…私の心に残った言葉に、マーク・ロスコ*の「絵は経験についてではない、経験そのものだ」というのがあります。“経験したことを描いているのではない、今まさに描いていること自体が経験なのだ“ このことは、私が絵を制作している
時の、まさしく原点を言い当てているように思います。……(談)
※(1903〜1970)ロシア系ユダヤ人、ジャクソン・ポロック、デ・クーニング
らとともに、抽象表現主義を代表するアメリカの画家。
以前は、人物の中に風景が溶け込んでいるようなとらえ方でしたが、最近は、人物は画面の中で小さくなり、風景の中の一本の木、あるいは記号となって点在します。
図8 第81回旺玄展 人の風景 S100 キャンバス・油彩・木炭
キャンバス、紙等の平面上の作業の方が、手の向くまま、心の傾くまま、線や色面を定着させやすく、油絵の具、透明水彩、ガッシュ、パステル、木炭などを使います。
木炭は、制作の最初から最後まで、濃淡で、線の表現方法として大切なものとなっております。
Q
:人と鳥が多く登場するようですね。
A
:鳥は私のあこがれです。いつも羽ばたきたいという気持ちがあります。私は、東京生ま
れの東京育ちで、厳しい自然の生活を知りません。そんなことから、自然に人間を観察
する方向に目が向いているように思います。
Q
:過去の作品に手を入れられることはありますか。
A
:過去の作品は過去の作品として、また改めて描くようにしています。尤も短いスパンで
は手を入れることはしばしばですが…。私の作品には時間がかかっています。
つめて描けば10時間〜20時間でしょうが、実際には、長い時間をかけています。 (談)
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